税務調査官の悩み(片山会計事務所グループ)

日本国憲法30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う 日本国憲法84条 あらたに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする この憲法84条の規定を課税要件法定主義と呼んでいます。税務調査での課税は必ずしもこの課税要件法定主義を充たしてはいません。つまり本来は課税要件の法律根拠が存在せず、憲法規定上は課税できないものを、調査官達は厳しい調査件数ノルマで無理な課税を行っているものがかなり含まれている訳で、これは課税庁側の更正決定処分で行われる課税ではなく修正申告書の提出といった形で「自主的」に申告を済ませている以上は決して表には出てきません。この事は少なからず良心的な調査官達を自己矛盾で苦しめている事となります。 国税庁は法律よりも「通達」で課税を行う事が一般的です。通達とは、国家行政組織法14条2項により大臣が下級庁に対して発するもので、問題になるのは法律の解釈を大臣または長官が決めてしまう解釈通達です。解釈通達は、例えば国税庁長官が発したものでしたら、国税庁の下級庁である国税局や税務署員は必ずこの解釈に拘束されますが、下級庁の職員以外の一般国民はその解釈に縛られる事はなく自由な租税解釈権を有しています。 通達とは国民に選ばれた国会議員により国会で審議されて可決された法律ではなく、大臣または長官の判断だけで下級庁に指示されるものですから、この解釈で課税を行う事は明らかに課税要件法定主義に反しています。更に通達でもなく解説書の一文を根拠にしたり、或いは過去の前例だけで課税をしたりという乱暴なものも見受けられます。